1回で書き終わると思っていたけれど、終わらなかったローマ編。
「その1」はこちらです。
旅をすることで人生は変わる ローマ編 その1 - チェコ好きの日記
★
長らくふれていませんでしたが、そもそもこの旅は、アンドレイ・タルコフスキーの、『ノスタルジア』という映画のロケ地をめぐる、という目的があります。
とある音楽家の伝記を書こうと、ロシアからイタリアへやってきた主人公のゴルチャコフ。
ゴルチャコフがイタリアで出会ったのは、世界の終末から家族を救おうと、妻子を7年間も家に閉じ込めているという、村の狂人ドメニコ。
ドメニコは最終的に、その行き過ぎた思想から自分自身を苦しめ、ローマのカンピドーリオ広場の中心、上の写真の銅像の上で、街ゆく人を相手に演説を行なったあと、焼身自殺をはかります。
(映画の動画はこちら)
Nostalghia - English trailer - Tarkovsky
ドメニコの演説の内容は抽象的で、簡単に解釈できるようなものではありませんが、さまざまな宗教をこえて、人々の胸に刺さる「何か」があります。
人間よ 従うのだ!
君の中の水に
火に 灰に
灰の中の骨に
「水」と「火」は、『ノスタルジア』以外の作品においても、アンドレイ・タルコフスキーの映画において重要なモチーフです。ドメニコが自分の体にガソリンをかけて、ジッポで火をつけるシーンは、いつ見ても鳥肌がたちます。
★
さて、ドミニコが焼身自殺をはかったカンピドーリオ広場をすぎると、私たちはまたごく普通の観光名所をまわります。
泉に向かってコインを投げると、またローマに来られるという噂があるトレヴィの泉。
ただし、観光客があまりにもたくさんコインを投げるので、現在は「コイン投げ」は禁止されています……。
何だかふしぎな「双子教会」。
★★★
しかし、普通のところを紹介してもアレなので、最後に、ローマでの私のとっておきを出します。
残念ながら内部の写真は撮れなかった上、外観も撮り忘れた? のですが、サンタ・マリア・インマコラータ・コンチェツィオーネ教会、ここはおすすめです。
上で紹介したトレヴィの泉から、歩いて400mくらいのところにあります。
ここには何があるかというと、教会内の壁という壁、装飾という装飾が、カプチン派の僧4000人の人骨で飾られているのです。通称、「骸骨寺」!!!
何だかホラーな感じの場所なので、そういうのが苦手な人は避けましょう。
でも、こういった「骸骨寺」、実はヨーロッパの各地にあるらしく、チェコにもクトナー・ホラという小さな町に、人骨で壁が埋められた教会があります。
(残念ながら、チェコのほうは私もまだ行ったことがありません。いつか絶対行きたいと思っています!)
この教会、内部に入ると、360度人骨だらけなワケですが、ここに骨を納めている僧たちは、生前に「自分の骨をぜひ教会の装飾に使ってほしい」と、いいのこしているのだそうです。
その話を聞いていたからか、360度人骨だらけでも、ふしぎと「嫌な感じ」「ホラーな感じ」はしませんでした。
むしろ、ちょっと表現がおかしいかもしれませんが、おもしろいなーと思ったし、あったかいな、とすら思いました。
禁止されていたので内部の写真は撮れなかったのですが、出口にポストカードが売っていたので、骸骨だらけのそのポストカードを、お土産に何枚か購入しました。骸骨だらけなのに、夜中に見ても全然怖くありません。骸骨寺のポストカードは、今でも私の宝物です。
「骸骨寺」というとアレな感じですが、地域の人に大切にされている、神聖な教会です。私は、とても雰囲気のいい教会だと思いました。
なので、ローマに行く機会がある方は、そのネーミングに負けず、ぜひ行ってみてほしいです。「骸骨寺」。
私も、もし死んだら、骨を土に埋めるのもいいけれど、こんなふうに壁の装飾になって、世界中の観光客を楽しませるっていうのもアリだなとか思っちゃいました。……ま、無理でしょうけど。
★
さて、長かったイタリア旅行が、ついに終わります。
フィレンツェからシエナへ、アッシジへ、オルヴィエトへ、そしてローマへ、ひたすら南下してきたイタリアの旅。
いくつもの教会をめぐり、映画のロケ地をめぐり、美術館で世界的な名画を見て、おいしいものもいっぱい食べました。(白ワイン飲めなかったけど。)
宗教のこと、芸術のこと、歴史のこと、自分のこと、たくさんたくさん考えた旅行でした。
いちおう大学院のゼミの旅行として行ったので、同伴者に教授がいたわけですが、イタリアを発つときに教授がいった、
「君たちは、いつかまた必ず、ローマに来ることになるよ」
という予言(?)を、今でも覚えています。
その予言どおり、私も、この人生において、いつかまたローマを、もう1度訪れることになるのだろうと、確信しています。
そのとき、ローマは、イタリアは、私にどんな景色を見せてくれるのだろう。
イタリアを発ったあと、私たちは、旅の最終目的地、パリに到着します。
『ノスタルジア』のアンドレイ・タルコフスキーは、1986年12月、肺癌のため、パリでその生涯を閉じます。
なので、長かったこの旅エントリ、次回が最終回です(たぶん)。
あともうしばらくお付き合いください。
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