チェコ好きの日記

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旅をすることで人生は変わる 番外編の「庭園」

2010年のイタリア~フランス旅行の想い出をつづった、「旅をすることで人生は変わる」シリーズを、全8回の連載で終了しました。

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旅をすることで人生は変わる ローマ編 その2 - チェコ好きの日記
旅をすることで人生は変わる パリ編 最終回! - チェコ好きの日記

ロシア出身でイタリアに亡命した映画監督、アンドレイ・タルコフスキーの映画『ノスタルジア』のロケ地をめぐる、というのがこの旅のテーマでしたので、各エントリもそれに沿って、あまり脱線することなく書いてきたつもりです。

ノスタルジア』という映画は、このブログで何度もいっているように、私が「もし明日死ぬとしたら、最後に観ておきたい映画」として即答できるくらい、すばらしく美しい映画です。

この映画は、なかなか重いテーマの映画なので、私の8回のエントリも、それにしたがって、慎み深い雰囲気のものが多かった気がします。(え? そうでもない?)

しかし、実際には『ノスタルジア』のロケ地以外にも訪れたところはたくさんあり、なかには「ふざけてる」としか思えない、変な場所もありました。

本編でそれを書くと話がブレる気がしたので省略しましたが、やっぱりこの「ふざけてる」としか思えない場所も紹介したいし、私自身も振り返ってみたいので、今回、番外編を作りました!

その「ふざけてる」場所とは、イタリアの庭園です。

庭園は、有名な観光地から離れている場所が多く、アクセスはしづらいし、予約をとるのも大変。

この旅行で庭園めぐりができて、幸せだったと思います。

では、ちょっと肩の力を抜いて行ってみましょう。番外編なので。

まずは、フィレンツェ

個人的には、フィレンツェで一番イケてる観光スポットは、花の聖母教会でもウフィツィ美術館でもなく、動物学博物館(ラ・スペーコラ)だと思っています。ボーボリ庭園の近くなので、歩いていきやすいのもポイント。
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こちらが、動物学博物館の庭園。壺の上に鉢植えがあるのがじゃっかん気になるけれど、別に変じゃないじゃん……と思った方。

ここの庭園は確かに普通です。すごいのは、その本体である動物学博物館のほう。(いきなり庭園から脱線)

この動物学博物館とは、大学付属の博物館でして、古今東西、ありとあらゆる動物の標本が展示されているのです。

なかは撮影禁止だったので、その百科絢爛なるトンデモっぷりをお見せできないのが残念ですが、館内の地図が残っているので、雰囲気だけでもお楽しみください。(私に文章力がもっとあれば……!)
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古今東西、ありとあらゆる動物の標本、というのは誇張ではありません。

軟体動物から始まり、貝類、甲殻類ときて、ひとで、ウミウシみたいな気持ち悪いの、虫、小型哺乳類、大型哺乳類、鳥類、魚類。

とりあえず全部ならべてみたよ! って感じです。

「冗談だろコレ」としか思えないようなレインボーの奇妙な色をした熱帯に生息する鳥とか、「ふくらみすぎだろ」とツッコミたくなるハリセンボンとか、鱗粉で目が痛くなりそうな蝶・蝶・蝶・蝶・蝶の連続(蛾をふくむ)とか。深海を這うアンコウがこちらを睨んでいたりとか。

しかし、話はここからです。

動物学博物館なので、動物の標本がならべてあるのは、まぁいい。たとえ、それがどんなに奇妙奇天烈なものだったとしても。館内地図の下のほうを見てほしいのですが、この動物学博物館、なんと人間の標本まできちんとならべてあります。

生身の人間をホルマリン漬けにしているわけではなく、ロウで作っているということですが、あのリアルさは、苦手な人はトラウマになってしまうかも。

心臓、血管、すい臓、肝臓、脳、腸、胃、すべてそろっています。

が、なかでも圧巻なのは、性器。

男性器もあるのですが、子宮からつながる女性器のシリーズがこれでもかと、延々と4部屋くらい続き、この博物館を創設した人物の趣味を疑ってしまいます。

グロテスクすぎて、まったくエロくないです。

それなりに歴史のある、それなりに由緒正しいこの博物館を、一応フォローしておくために真面目に考察すると、人間が生まれてくる起源であり、永遠の神秘である女性器の謎を、当時の研究者たちは何とか解明しようとしたのでしょう。

ちなみに、こういうグロテスクさに耐性があるのは、意外と女性のほうだったりします。

男性陣はこの人間ゾーン、オエオエ言いながらそそくさと通りすぎていましたが、私は内臓も男性器も女性器も興味深かったので、どの部屋もじっくり堪能させていただきました。

あと、ところどころで何の脈絡もなく、いきなりドールハウスが現れたりもします。あれ、ホントに何??


フィレンツェの一番は、やっぱり動物学博物館(ラ・スペーコラ)です。

続いて、オルヴィエト

オルヴィエトから車で少し行ったところに、あの澁澤龍彦もエッセイで触れている伝説の庭園、「ボマルツォの怪物公園」があります。

滞欧日記 (河出文庫)

滞欧日記 (河出文庫)

ボマルツォは、1550年代に、軍人ヴィチーノ・オルシーニ公が構想した庭園。

「怪物公園」と名にあるとおり、巨人、食人鬼、蛇女、人面魚など、奇怪な怪物たちの彫刻がならびます。

退廃的で、まさにマニエリスムの時代の産物、という感じ。

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逆さにされている人が「ヤメテ~!」っていってます。

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見えにくいですが、口のなかにテーブルとイスがあって、ここでランチをとることも可能といえば可能。

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ちょっとエロい。

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かわいい顔ですね。

ボマルツォはこんなふうに、怪物とはいえどこか憎めない、キュートな彫刻がならぶ、和みの庭園です。

オルシーニ公がここで何をしたかったのかは、永遠の謎ですが。

ラストは、ローマ近郊

ボマルツォから車でさらに進んだところに、ランテ荘があります。
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こちらの庭園も、マニエリスムの時代に建造されたもの。

つくづく面白い時代ですね、マニエリスム……。

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この中央の噴水にたどりつくために、

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こぉんなグルグル迷路を通っていかなきゃいけないのですよ。
いったい、何のために……

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上から見ると、こんな感じ。グルグルしています。

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途中、何があったのか知りませんが、珍妙な顔をしたおっさんが「べぇぇ~」と水を吐いていたりします。いったい、何のために……

私は崇高な美術も好きですが、それと同じくらい、いやそれ以上に、
アホらしくてワケのわからんモノが大好きです。

ビジネスとか、効率とか、ロジックとか、マーケットとか気にしていたら、ラ・スペーコラでオエオエ言うまで延々と女性器をならべたり、かわいい怪物だらけの庭園を作ったり、グルグル迷路を作ったりできません。
Logic,Market and ART の「ART」のきたえかた - チェコ好きの日記
(無理やり前のエントリの話とつなげる私……)

だから私は、アートを愛しているし、いたずら心や、アホらしいものの力を信じているんです。

以上で、番外編を終わります。
イタリア庭園に興味を持たれた方は、こちらの書籍がおススメ!

イタリア庭園の旅―100の悦楽と不思議 (コロナ・ブックス)

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