長期の休暇があり、旅行に行くとします。
あなたはまず、どうやって行先を決めますか?
また、その旅行はだれと行きますか?
事前にどんなガイドブックを買いますか?
ガイドブック以外に、何か本は買いますか?
どこを、どんなふうに、どれくらい時間をかけてまわりますか?
旅行には、何を持って行きますか?
「旅行に行く」ということを決めただけで、考えなければいけないこと、用意しなければならないもの、準備しておかなければならないことは、次々に出てきます。そして、それぞれにどのような決断を下すか、行った旅行先で、何を感じ、考え、帰ってくるかは、人それぞれ。さまざまなスタイルがあります。
……が、そのさまざまな“スタイル”は、大きく4種類ほどに分けることができるんじゃないかなー、と最近私は考えたわけです。
これから旅行に行く予定がある人は、ぜひ自分に置き換えてみて、自分はどのスタイルの旅行者なのか、考えてみると面白いかもしれません。また、最近旅行から帰ってきた人も、今回の旅行がどのスタイルのものだったのか振り返ってみると、新たな発見があるかもしれませんよ。
もちろん、どのスタイルが優れていて、どのスタイルが劣っている、なんてことはありません。ただ、自分の旅行のスタイルを客観視して、他人と比べてみると、ちょっと面白いかもしれないよ! という話です。けれど、もし他の人の旅のスタイルに興味をもったら、次回の旅行から少しずつその要素を取り入れてみるのもアリですね。
というわけで、以下は、私が考えた4つの旅行者のスタイルです。それぞれのスタイルの人へのおすすめ本紹介付き。
★★★
1・社会派の旅行者
- 作者: ちきりん
- 出版社/メーカー: 大和書房
- 発売日: 2012/05/19
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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ブロガーのちきりんさんや、ジャーナリストの池上彰さんのような人が旅行に行くと、「社会派」の旅行者になります。
「社会派の旅行者」とは、旅行先と自分の国(国内旅行なら、自分の地元)との小さな差異を発見し、その差異の原因を考えることに、旅行の楽しみを見出す人たちです。
非日常である旅行先と、日常である自分の国(地元)に差異があるのは当然といえば当然なのですが、他の3種類の旅行者は、その差異について、突き詰めて考えてみたりはしません。「差異があるなぁ」と、ただ素通りするだけです。
ところが、「社会派」の旅行者は、差異の原因を突き詰めて考えてみることで、自分のなかの価値観や、あるものに対する概念を、大きく変えてしまいます。その経験は、その人の人生や仕事に、きっと大いに役立つでしょう。
普段から、政治や社会問題や経済について考えることが好きな人は、きっと「社会派の旅行者」になれるはず。
おすすめ本は、もちろんちきりんさんの『世界を歩いて考えよう!』です。ブロガーのちきりんさんが旅した、さまざまな国のさまざまな「差異」が、ちきりんさんの深い思考によって、考えつくされています。
2・ヴァカンスの旅行者
- 作者: よしもとばなな,潮千穂
- 出版社/メーカー: 世界文化社
- 発売日: 2012/04/18
- メディア: 単行本
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「ヴァカンスの旅行者」は、字のままですが、旅行をヴァカンスとして考えている人たちです。老若男女、すべての旅行者において、割合としてもっとも多いのは、このタイプの旅行者です。
「ヴァカンスの旅行者」は、旅先で日常の疲れを癒し、元気を回復することが目的なので、旅先には行き慣れたよく知っている国を選ぶことがしばしばあります。また初めて行く場所でも、南国リゾートやフランス、イギリス、オーストラリア、韓国など、有名観光地を選ぶでしょう。日本人が多いエリアに旅先が集中してしまうこともあるので、「それが安心なのよ!」という人はいいけれど、たくさんの日本人を避けたいという人は、少し考えてみる必要があるかもしれません。
「ヴァカンスの旅行者」は、旅先で日常の疲れを癒すのが目的なので、事前準備でエネルギーを使い果たしてしまうと、旅の楽しみは半減です。ぜひうまくコントロールして、リフレッシュして帰ってきましょう。お買い物も、たくさんしてください。
おすすめ本は、よしもとばななさんの『ゆめみるハワイ』。写真が美しく、見ているだけで心が和む本です。あまり難しいことは考えず、五感をフルに使って癒されてください。
3・意識の高い旅行者
- 作者: 成瀬勇輝
- 出版社/メーカー: ディスカヴァー・トゥエンティワン
- 発売日: 2013/05/16
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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「意識の高い旅行者」とは、旅を自分のキャリアや次のビジネスに有効に役立てようとしている人たちです。SNSをはじめとするネット上のサービスを使って、世界中のさまざまな人たちとコンタクトをとり、行く先々で会っていることも多いようです。
「意識の高い旅行者」は、キャリアにつながるような旅をすることが目的なので、20代の社会人や大学生など、若い人たちがその割合の多くを占めています。彼らは、帰国後のことを想定しながら、1つのプロジェクトとして旅を考え、準備を周到にします。ときに、旅の資金として、企業に協賛金を募ることもあります。
1つのプロジェクトなので、「世界のヒッピーコミュニティを訪ねる」とか、「世界のオーガニック食材を研究する」とか、何かしらのテーマをもって旅に出ると、しっかりキャリアにつながる旅ができるようです。ある意味「仕事」である以上、人目を引くようなインパクトや大胆さも必要になってくるため、企画段階から旅の主旨をしっかりと固め、第三者にプレゼンできるくらいにしておきましょう。
おすすめ本は、成瀬勇輝さんの『自分の仕事をつくる旅』。キャリアにつながるような旅の企画の考え方や、実際にキャリアにつながった旅をした人たちのさまざまな例が載っています。
キャリアにつながるかつながらないかは別として、「テーマをもった旅をする」ということは、他の3種類の方も参考にしてみるといいかもしれません。他のだれのでもない、「自分だけの旅」ができるはずです。
4・文学系の旅行者
- 作者: 村上春樹
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1991/07/30
- メディア: 文庫
- 購入: 6人 クリック: 28回
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「文学系の旅行者」とは、旅先で、その土地の芸術や文学、背負ってきた歴史に思いを馳せることを第一の目的としている旅行者です。作家の村上春樹、池澤夏樹、ちょっとシブいところだと澁澤龍彦なんかは、このタイプの旅行者でしょう。
「文学系の旅行者」となるには、事前にその国、土地の芸術や文学について、それなりに深いレベルまで理解をしておく必要があります。もともと詳しいのなら別ですが、最低でもその国や土地に関する本を、出発前に10冊くらい読んでおくといいかもしれません。文学や芸術のほか、その国(土地)の宗教や文化についても、なるべくたくさんの知識を得ておいたほうがいいと思います。
そして旅先では、その国や土地の風景から、美術館から、街行く人々から、食べ物から、気候から、さまざまな作品が生まれた「原風景」に思いを馳せ、感じ取りましょう。この場所だからこそ、この作品が生まれたんだと、理屈抜きで理解できれば、あなたは立派な「文学系の旅行者」です。また、帰国後に自分が訪れた場所をノスタルジックに思い返すことができれば、それも「文学系の旅行者」の要素です。
おすすめ本は、村上春樹の『雨天炎天』です。ギリシャ正教の総本山、アトス島への旅行記がエキサイティングです。世界には、まだまだ不思議な場所がたくさんあるようです。
★★★
ちなみに、私は「文学系の旅行者」だと自分で思っていますが、リゾートへ行くときは「ヴァカンスの旅行者」になりますし、現在計画を立てている旅行は「意識の高い旅行者」のごとく、企画書を作っています。だれにも見せませんけど。また、素質がないので真似しようにも真似できませんが、「社会派の旅行者」のことを、とても尊敬しています。
それぞれのスタイルはそれぞれにすばらしいので、「今回はこれだ!」と旅ごとに別の種類の旅行者になりきってみるのもいいかもしれません。私も現在、修行中の身(?)です。
で、それぞれのスタイルはそれぞれにすばらしいのですが、このブログではやっぱり、私の得意分野である文学系の旅行をフィーチャーし、今後もスポットライトを当てていこうと思っています。
村上春樹のような、池澤夏樹のような、澁澤龍彦のような旅をするためには何をどうすればいいのか!?
一緒に考えていきましょう!