チェコ好きの日記

もしかしたら木曜日の22時に更新されるかもしれないブログ

2020年上半期に読んで面白かった本ベスト10

恒例のやつです。今年の1月から6月末までに私が読んだ本の中で、面白かった本10冊のまとめ。おそらく今年の夏は、海外はもちろん、国内でも旅行の計画はなかなか立てにくいと思うので、少しでも読んでくれる人のおうち時間の足しになれば幸いです。


2019年末のやつはこちら
aniram-czech.hatenablog.com


10位 『世界史を変えた13の病』ジェニファー・ライト

世界史を変えた13の病

世界史を変えた13の病

このコロナ禍のなかでつい読みたくなってしまった感染症関連の本。ペストからスペイン風邪ハンセン病から梅毒まで、さまざまな病気が人類の歴史にどう影響を与えたのかが書いてある。著者の文体にちょっとクセがあり、たまにアメリカンブラックジョークみたいなのが鼻につくが、私はそういうの慣れてるから平気(?)。

9位 『いまさらですがソ連邦速水螺旋人,津久田重吾

いまさらですがソ連邦

いまさらですがソ連邦

3月上旬まで、バルト三国ポーランドを旅する予定でいた関係で読んだ本。私が大学と大学院で研究していたのもソ連の影響が色濃かった時代のチェコスロヴァキアだったので、一部は少し懐かしく感じるところもあり。リトアニアKGB博物館、行きたかったなあ。

8位 『アメリカ紀行』千葉雅也

アメリカ紀行

アメリカ紀行

千葉雅也さんのアメリカ旅行(旅行ではないな、研究)記。コンビニがないとか、なんとなく水場が汚いとか、すごく小さなほとんどどうでもいいようなことなんだけど、日本以外の国へ行くと身体をとりまく不協和音にいつも戸惑う。その不協和音はおそらく「不快」と感じる人が大半で、しかし私のような旅行中毒者にとってはその不協和音こそが快感で、だから今年日本の外に出られないというのは本当に悩ましいのであった……。

7位 『ハックルベリー・フィンの冒けん』マーク・トウェイン

ハックルベリー・フィンの冒けん

ハックルベリー・フィンの冒けん

「すべてのアメリカ文学の源流はここにある」的なことをヘミングウェイが言ったらしいので(ソース不明)、そういえば読んだことなかったなと思い読んでみたら面白かった。トムソーヤのほうは知っている人が多いと思うけど、ハックルベリー・フィンは子供向けではなく、黒人差別問題や父親の問題などが物語の中心にあり、かなり大人向け。下半期はこの物語をさらに深く読み解くために、批評をいくつか読みたいと思っている。

6位 『ナショナル・ストーリー・プロジェクト』ポール・オースター

AMの連載でも取り上げたポール・オースター。政治家でも芸術家でもない普通の人々が体験した、「ちょっとヘンな話」を集めた短編集。この状況でバラバラになってしまった何かをもう一度つなぎ合わせるため、あえてバラバラなものを読む。なんとなく、今のこの時期に読むのに適した本だなーと感じる。

5位 『贅沢貧乏のマリア』群ようこ

贅沢貧乏のマリア (角川文庫)

贅沢貧乏のマリア (角川文庫)

『贅沢貧乏』といえば森茉莉だが、森茉莉ももちろんいいのだがより現実感のある(?)群ようこのこちらのほうが印象に残った。ゴミに埋もれながら孤独死を遂げた独身の森茉莉。家にいるしかない今期の私は過去最高にインテリア熱と掃除熱が高まっており部屋はゴミ屋敷ではまったくないんだけど、別に散らかっててもそれはそれでいいんだよな、と本気で思えるようになった(異臭とかするレベルまでいくと近隣の人の迷惑になるけど)。

4位 『ナラタージュ島本理生

ナラタージュ (角川文庫)

ナラタージュ (角川文庫)

なんか前も言ったので宣伝臭がしてしまうかもしれないが、AMの連載で時勢もあってかものすごくたくさん読んでもらえたらしい『ナラタージュ』の回。私自身は倫理観が世の中とかけ離れすぎていて時折戸惑ってしまうこともあるんだけど、それはやたら本ばかり読んでいるので、「ケース・バイ・ケース」の「ケース」をたくさん頭の中に持っているから……ということにしたいですね。『ナラタージュ』もまたひとつの「ケース」だ。

3位 『アーレントハイデガー』E・エティンガー

アーレントとハイデガー

アーレントとハイデガー

こちらも、3月上旬までバルト三国ポーランドを旅する予定でいた関係で読んだ本。ポーランドアウシュヴィッツ博物館に行く予定だったので、ユダヤ人やナチスドイツに関する本を上半期はいろいろ読んでいた。『エルサレムアイヒマン』を著したアーレントと、ナチスドイツを支持したと考えられている(反対意見もある)ハイデガーの関係は謎めいていて、宿命めいていて、すごく惹かれるものがあるんだよなあ。

2位 『聖なるズー』濱野ちひろ

聖なるズー (集英社学芸単行本)

聖なるズー (集英社学芸単行本)

ドイツの動物性愛者の団体を追ったドキュメンタリー。賛否ある内容だとは思うけど、すごくすごく面白かった。性愛や恋愛に興味がある人、動物が好きな人にはぜひ読んでみてもらいたい。「獣姦」というと忌々しいけど、動物と対等な関係を築いた上でセックスをすることは可能なのか、そもそも対等とは何なのか、人間同士であれば対等は成り立つのか、などなど問いは無限に浮かぶ。

1位 『猫を棄てる 父親について語るとき』村上春樹

ぶつぶつ文句を言いながらもやっぱりあん村上春樹が好きなのね、という結果になってしまった。いつも通りの春樹のエッセイといえばその通りなんだけど、「村上春樹って日本人だったのか……」という新鮮な驚きがある。子供の頃からずっとバゲットにバターを塗ってレタスと生ハムを挟んで深煎りのコーヒーと一緒に食べてるのかと思いきや(BGMはギル・エヴァンス)、春樹はちゃんと味噌汁と納豆のある場所で生まれ育っていた。「何言ってんだ」と思われるかもしれないけど、本当にそうなんだよ。日本文学よりはアメリカ文学に位置付けられ、無国籍な存在として受け入れられている春樹文学だけど、これはちゃんと「日本」だ、と思える春樹唯一の著作かもしれない。

まとめ

2020年上半期は、コロナウイルスでわちゃわちゃしていた記憶しかない……という人がたくさんいるはず。私もまた例外ではない。2020年といえば東京オリンピックを開催するはずだった年で、『東京タラレバ娘』の主人公たちは「オリンピックを1人で見るなんて!」と結婚を焦っていたわけだけど、実際に訪れた2020年はちょっとそれどころじゃないというか、コロナ以外の部分も合わせて「時代は変わったんだな」という感じがする。私は未来のことや先のことを考えて行動するのが苦手なんだけど、それはこんなふうに、時代や世相や自分を取り巻く環境はすぐに変わってしまうからだ(と、言い切るのは言い訳がましいが)。だから、そのときの自分の信念と確信に基づいて行動するしかない。それ以外の部分は、ほとんど無視したってかまわない。

と、きれいに言い切れるほどアッサリした人間では私も全然ないけれど、下半期も引き続き体力勝負になりそう。健康になりたい……。


★最後に宣伝★ 私の本も夜露死苦