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チェコ好きの日記

旅 読書 アート いいものいっぱい 毎日楽しい

本好きにとっての隠れた穴場を発見です!

読書 東アジア

実は年末、こんなところに出かけていました。
ココチホテル沼津 【公式サイト】|ベストレート保証|TOP

静岡県沼津市にある、「ココチホテル」というホテル。

一見、普通のビジネスホテルなのですが、ホームページをよ~く、ご覧ください。

リラックスタイプ、ビジネスタイプのお部屋にくわえ、プレミアム&デザイナーズタイプという種類のお部屋があります。

このプレミアム&デザイナーズタイプのお部屋というのが、沼津市出身のデザイナーであるひびのこづえさんの他、一般公募で選ばれた4名のデザインした、相当に変わったお部屋なのです。

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こちらのお部屋をデザインしたのは、何と7歳の女の子というから驚きです。
プラネタリウムを使って、お部屋の壁に星空を投影することもできるんですって。
何とまあ夢いっぱい!

しかし、私が宿泊したのはこちらのお部屋。
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「トラベルライブラリー」という名前のお部屋で、部屋の壁には一面、本がならんでいます。

この部屋においてある本、もちろん宿泊者は、実際に手に取って読むことが可能です。
ふと目があった1冊を、さっと取って、ソファに腰かけじっくり読む。
ちょっと飽きたら、また別の本。そんなことをくりかえしていると、
ご飯を食べに行くのも、眠るのも惜しい。
1日をずっと本に囲まれて過ごせる、本好きにとってはたまらないお部屋です。
そして、もし気に入った1冊があれば、実際に購入することもできます。

旅と本

「トラベルライブラリー」、ビジネスホテルの一室としては、
相当に変わったお部屋だということはおわかりいただけると思います。

しかしこのお部屋、見た目やコンセプトの奇抜さを裏切らない、
すっごくすごくいいお部屋でした。
※あ、私はもちろん、ココチホテルからお金はもらっていませんよ。笑

何がよかったって、本のセレクトがよかった。

宿泊前は、ちょっとおしゃれな絵本とか、
表紙がきれいな写真集くらいしかないのかと思っていたのですが、
そんな期待はあっさり裏切られました。

塩野七生の『ローマ人の物語』もあり、ヘミングウェイヘルマン・ヘッセもあり、
池澤夏樹もあり、もちろん村上春樹もあり、
他にも宇宙の本、旅の本、哲学の本。

このお部屋におく本をセレクトしたのは、デザインを手がけた永田暢彦さんなのでしょうか?

この部屋に泊まる1週間前に自分で買って読んでいた、

眠れなくなる宇宙のはなし

眠れなくなる宇宙のはなし

この本もおいてあって、不思議なシンクロを感じてしまったり。

とにかく、おいてある本がすごく充実していて、あれもこれもと手を取っているうちに、
1泊がおわってしまいました。

思えば、「旅」と「読書」というのは、とても相性がいいのです。

どちらも、「ここではないどこか」へ、日常をはなれて、
しばしの間、放浪するものです。

そして、「旅」も「読書」も、「必ずまた帰ってくる」ことが、前提にあります。

帰ってくることがなければ、それは「旅」ではなくて移住だし、
帰ってくることのない「読書」は、精神の世界に迷いこんでしまいます。

「必ずまた帰ってくる」ことを前提にしているからこそ、
旅も読書も、切なかったり、ノスタルジックだったりするのです。

都会の喧騒をはなれた沼津市で、僧侶のように隠遁しながら、
ただひたすらに本に囲まれ、本を読んでいた年末。

いい時間でした……。

想定外の出会いを得る

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さて、私たちが現在、本を手にする代表的な場といえば、
本屋か、アマゾンか、図書館か、そんなところになるはずです。

ただ、よく指摘されていることではありますが、
それだとどうしても手に取る本が、「自分の興味対象」の外に出ていきません。

もちろん、「自分の興味対象」の本をじっくり深く読んでいく時期も、必要です。

でも、
大学の課題で無理やり読まされた本が意外とおもしろくてはまってしまったとか、
友人に紹介された本が案外よかったとか、

「想定外の出会い」というのも、長い読書人生(?)では、スパイスになります。


で、こういう形態――つまり、ホテルに本がおいてあるような形態だと、
ちょっと外にスパイスを得にいくには、最適なんじゃないかと思ったわけです。


都内には「本が読めるカフェ」なんていうのもありますが、
カフェだと店員さんやほかのお客さんの目が気になって、
自由に本が取れなかったりしませんか?

しかしもちろん、ホテルだったらそんな心配は不要です。
係員さんも、他のお客さんも、お部屋にはいないからです。

本当に、気の向くままに、あれこれ手に取って読めるわけです。


ちなみに、私にとって、今回「スパイス」になったなぁ、と思う1冊はこれ。

天動説の絵本―てんがうごいていたころのはなし

天動説の絵本―てんがうごいていたころのはなし

この本は、世界がまだ、地動説ではなく天動説を信じていたころ……
中世の価値観を、小学生でもわかるように、表現した絵本です。

家の奥から引っ張り出してきたような、宝の地図のような、
ちょっと古めかしいデザインが魅力の、すてきな絵本です。

私は普段の生活で、絵本を手に取ることは滅多にありません。
なので、ココチホテルに泊まらなかったら、
この本に出会うことはなかったでしょう。


中世の人々は、世界は平面だと信じていました。
なので、船で「世界の端っこ」まで行ったら、端から落ちてしまうんじゃないか……
と、考えていました。

中学生のとき、社会の授業で先生の話を無視して、
資料集をぼんやり眺めていたらそんな話が載っていて、
その「端から船が落ちる図」に、妙に惹きつけられたことを、思い出しました。

中世の人々は、「知らない」ことによって、魔女裁判を行なったり、
ペストを「ユダヤ人が毒をばらまいてる」といって、おかしな恐怖に怯えたりしたわけですが、

私は「端っこに行ったら落ちちゃうんじゃない?」という、
中世の素朴な世界観が、何か好きなんです。
なぜだろう。

自分たちのものとは異なるパラダイムで、
世界を見てみるのがおもしろいのかもしれません。


「知らない」ことはときに、それだけで、暴力にも罪にもなりうる。
しかし、私たちはあまりにも多くのことを「知りすぎて」しまったのではないか……。


そんなことを考え、ジレンマに悩まされながらも、
この本との出会いを感謝せずにはいられませんでした。


★★★
さて、まずビジネスの才覚はないであろうと自負している私ですが、

「ホテルで本を選ぶ」という形態、

一般公募でデザインを決めるという、
かなり変わったコンセプトのビジネスホテル……

儲かるか儲からないかはわかりませんが、
ただひたすらに価格競争をやるより、何か新しいことをやっていただいたほうが、
客としてもおもしろいわけです。

こういう珍しいことをやってくれるホテルに、私は期待してしまいます。

おいしい料理でも、癒しの温泉でもない、
新しいホテル。

私だけの穴場にしておきたかったですが、
本当にいいホテルだったので、紹介します。

静岡県沼津市に行く予定がある方は、ぜひ。