チェコ好きの日記

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親より先に死にたい? 後に死にたい?

社会学者の上野千鶴子さんと古市憲寿さんの対談本『上野先生、勝手に死なれちゃ困ります 僕らの介護不安に答えてください』はけっこう前に読んだんですけど、思うところあって最近再読しました。親の介護や老いと死、また自分の介護や老いと死について考えさせてくれる良書なので、30代以下の世代にすんごいおすすめです。


この本のなかで話題にできることは数えきれないくらいあるんですけど、以前読んだときから私のなかでずっとひっかかってモヤモヤしていたのが、下記の部分なんですね。

上野 親より先に死なないのが一番の親孝行って言うでしょ。私は親が死んだ時に、これでどこで野垂れ死にしてもよくなってほっとした。
古市 逆に自分が死んで、親が悲しんでいるイメージのほうがリアリティがあって想像しやすいですね。
上野 親より先立つのは親不孝だって気持ちはないの?
古市 いや、あんまりないですね……。もちろん親不孝だとは思いますけど、親より先に死んだらいけないっていう規範よりは、親に先に死んでほしくないっていう気持ちのほうが強いかな。
上野 じゃあ、親が生きているあいだに自分が死ぬほうがラク!?
古市 ああ、ラクですね。親が悲しむのはわかるんですけど……。
上野 自立したくないって欲望を突き詰めると、親がいるあいだに自分が死にたいって気持ちが出てくる。自分が庇護される側のまま、一生子どもとして生きて、子どものまま死にたい。団塊世代はこういう子どもを育てたのか!
(p37-38)

古市さんはあまり性格がよろしくないので*1、上記の「親より先に死にたい」発言も、古市さん個人の意見というよりは「〜と、思っている若者が多いんですよ」ってかんじで話を盛り上げるために言ったのかなーと邪推してしまうんですが、対談本のなかで古市さんからこのような発言が出るということは、若者のなかには少なからずこういう考え方をもっている人がいるということでしょう。うーん。

みなさんは、親より先に死にたいですか? 後に死にたいですか?

順番はまもるべきもの

私が小学生のときにやっていたアニメ『地獄先生ぬ〜べ〜』では、「親より先に死んだ子どもは、賽の河原で永遠に石積みをやらされる」といっていました。石を1つ積み、2つ積み、ほどほどの高さになったところで鬼が石を崩しにやってくるので、石積みが永遠に続くわけですね。余談ですが、人間て意味のないことを延々とやらされると気が狂うらしいですね。穴を掘ってそれを埋めるのをくり返す、とか。

……というのは冗談ですが、そんな話が伝えられるくらい、昔の人も「子が親より先に死ぬことは罪」と考えていたのでしょう。不慮の事故や災害、病気などどうしようもないケースはあると思いますが、やっぱり基本的には順番はまもるべきもの。私は親より先に死にたいと思ったことはないので、ちょっとびっくりしてしまいました。

もちろん古市さんも、そして少なからずいるらしい(?)若者も、本当に親より先に死のうと具体的に行動しているはずはなくて、「ただ何となくそう感じる」という感情の話をしているだけです。「思っちゃう」のはしょうがないので批判できないし、するつもりもないんですけど、「どこをどうしたらそんなふうに思うのー!?」と不思議な気分になってしまいました。気になる人を後に遺したら、心配で成仏できないじゃないですか……。

死と向き合うのって難しい

上記とは別の本の話ですが、上野千鶴子さんのご友人は両親の死を「親に死なれるって、死と自分のあいだに立っていた遮蔽物がなくなって、吹きさらしになる感じ」と表現していたそうで、これはなるほどなー、と思いました。

堀江貴文さんとか孫正義さんとか、いわゆる「スゴイ人」は、若い頃から“自分の死”を強烈に意識していた、なんて話を聞いたことがあります。でも、普通の人にとってはやっぱり“自分の死”なんてまったくリアリティがないし、どこかぼんやりとしたものでしかないでしょう。特に「親の死」をまだ経験していない人の場合、上記の上野さんのご友人のように、その存在は“今の自分”と“自分の死”の間に、衝立のように立っているものなのかもしれません。幸い、私の親もまだピンピンしています。

本を読んだくらいでその衝立をどかすことなんてできるはずもないんですが、それでも「吹きさらし」になる前に、スキマ風くらい味わっておこうと考えている今の私です。上野千鶴子さんの一連の「老後シリーズ」が好きでめちゃくちゃ読んでるんですが、このシリーズはスキマ風がすーすーしてくるので本当におすすめ。


人間やっぱり若いうちのほうが能天気でいられるし楽しいのかもしれないけれど、“自分の死”や“老い”について考えることもまた、人生の味わいの1つだと私は思っています。あんまり楽しい話題じゃないんですけど、地に足をしっかりつけられるかんじがします。

夏だし、みなさまもすーすー涼んでみていいんじゃないでしょうか。
今回はこのへんで。

関連エントリ
アラサー♀が『おひとりさまの老後』を読んで考えてみた。 - (チェコ好き)の日記
参考
人生の有限感 - Chikirinの日記

*1:社会学者はちょっと性格悪いくらいのほうが向いていると思うので、褒め言葉です。