チェコ好きの日記

だいたい木曜日の22時に更新されるブログ

2017年に読んで、面白かった本ベスト10

メリークリスマス! 今年も、読んで面白かった本ベスト10をまとめてみる。もし気になる本があったら、サンタさんにお願いしてみてください(今からじゃ遅いか)。

ちなみに2017年上半期編はこちら。年間ランキングなので一部重複しております。
aniram-czech.hatenablog.com

2016年編はこちら。
aniram-czech.hatenablog.com

10位 『珍世界紀行』都築響一

珍世界紀行 ヨーロッパ編―ROADSIDE EUROPE (ちくま文庫)

珍世界紀行 ヨーロッパ編―ROADSIDE EUROPE (ちくま文庫)

全ページ閲覧注意な勢いで気持ち悪い本なので、夜に読んではいけません。蝋人形博物館とか拷問博物館とかセックスミュージアムとか医学研究所とか、ヨーロッパの気持ち悪い観光名所をひたすら紹介しています。私はこの中だと、イタリア・フィレンツェのラ・スペーコラ、ローマ近郊のボマルツォの怪物庭園、それからローマの骸骨寺に行ったことアリ。

私はエログロがイケるクチ、というかそれが専門みたいなところすらあるので*1、ちょっとくらい変なところは全然許容範囲なんだけど、これを読んで拷問博物館だけはダメかもと思った。ね、ねずみをさ、胸の上に置いたゲージに入れて、その上で炭を焼くと、ねずみが熱から逃げようとして胸の皮膚を食い破って体内にもぐるらしいのね。そんなとこいちいち蝋人形で再現してくれるなっていう。私は痛いのがダメなんですわ。山本英夫の『殺し屋1』が読めないタイプなんですわ。でも拷問博物館以外はわりと全部行ってみたい。


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(※これはボマルツォの怪物庭園のエロい彫刻)

9位 『風姿花伝・三道』世阿弥

風姿花伝・三道 現代語訳付き (角川ソフィア)

風姿花伝・三道 現代語訳付き (角川ソフィア)

「良い文章ってどうやったら書けるんだろう?」というのは私にとって終わりのない命題だ。今年はちょこまかといろいろなことに挑戦しつつも、裏ではずっとずっとそれだけを考えていた気がする。そして世阿弥の『風姿花伝』は、「良い文章を書くために」という問いに対する1つのアンサーであり、また広く芸事に従事する人にとって必読の書ではないかと思う。

栄光は長く続かない。時の運によって獲得した名声を、自分の実力だと思ってはいけない。世間はいつも気まぐれである。「面白い」とは何か。それは咲いて散る花であり、常に自分が変化し続けなければ手に入らないものである。

などなど、要約するとめちゃ意識高いことが書いてあるんだけど、600年以上も前の人が言うんだったらまあちょっとくらい意識高くてもいっかという気になる。ちなみに角川文庫の『風姿花伝』を読むのがダルイという人は、NHK「100分de名著」シリーズのほうもあるので、これも内容が上手くまとまっていておすすめです。

NHK「100分de名著」ブックス 世阿弥 風姿花伝

NHK「100分de名著」ブックス 世阿弥 風姿花伝

8位 『とらわれない生き方』ヤマザキマリ

実は長年、「女性の書いたエッセイ」があまり好きではなかった。好きではないというか、別に嫌いではないのだけど、「いい本だったなあ」で終わってしまうことが圧倒的に多く、作者自身の思想や生き方に共感することがほぼ皆無だった。まあ本くらい別に好きに読めばいいんだけど、「ひょっとして、私は名誉男性の地位が欲しいのかな? 女性としてのアイデンティティを受け入れられないのかな?」と自分で自分を心配したりしていた。

でも、去年の終わり頃から少しずつ読むようになったヤマザキマリさんのエッセイはそういえばすごく共感できて、SOLOのコラムで「憧れの年長女性がいない」と書いた私にしては珍しく「こういうふうになれたらいいなあ!」と素直に思える女性だったことに気が付いた。尊敬できる憧れの女性、いるじゃん! いたわ!

というわけで、別に私は名誉男性の地位が欲しかったわけでも女性としてのアイデンティティを受け入れられなかったわけでもなく、女性の思想や生き方があまり響かないのは単に趣味嗜好の問題だったという話にできそうで一安心している。ヤマザキマリさんは物事を楽観的かつ大局的に捉える人なので、私と同じようなタイプの人は落ち込んでしまったときとかに読むのおすすめ。悩みに寄り添ってくれるというよりは、「そんなんで悩む必要あります?」みたいなことを言う人だ(だから合わない人にはすすめない)。

7位 『日本人の身体』安田登

日本人の身体 (ちくま新書)

日本人の身体 (ちくま新書)

能楽師の安田登さんが書いた身体論。ついでに言うと、安田さんが連載しているウェブのコラムが大好きで、毎回楽しみにしている。

風姿花伝』に続き能関係の本ではあるのだけど、能楽論の中に出てくる「老」についての思想が私は好きだ。「老」は現代では醜いものであり、避けるべきものとして扱われるけど、本当に実力のある役者は老いてなお輝くものを持っているらしい。芸事に従事する人間は、「若さ」に頼っていては危険なのだ。

6位 『断片的なものの社会学』岸政彦

断片的なものの社会学

断片的なものの社会学

「語られて」しまうもの、あるいは編集された人生 - チェコ好きの日記

詳しい感想は前に書いたので割愛。この本、「断片的」というだけあって全体がぼわ〜んとしているし、かなり捉えどころのない本だと思う。にも関わらず私のまわりでとても評判がいいので、もしかしたらみんな「編集」に疲れているのかもしれないな。

5位 『神を見た犬』ディーノ・ブッツァーティ

神を見た犬 (光文社古典新訳文庫)

神を見た犬 (光文社古典新訳文庫)

どうしても「待てない」人たちへ - チェコ好きの日記

この本の感想、というわけではないんだけどそれに近いものを以前書いた。『神を見た犬』は短編集で、表題作の他『七階』という作品が人気らしい。『七階』はめちゃめちゃに後味が悪い話なんだけど、ブッツァーティらしくて良い。カフカとか星新一が好きな人は読んでみてください。

4位 『はい、泳げません』高橋秀実

はい、泳げません

はい、泳げません

「できる」と「できない」の間の話 - チェコ好きの日記

このエッセイ、やっぱりいいな〜。いつかこんな文章が書けたら素敵だな、と思う本。笑ってしまうので電車とかではなくおうちで読みましょう。

3位 『バビロンに帰るスコット・フィッツジェラルド

バビロンに帰る―ザ・スコット・フィッツジェラルド・ブック〈2〉 (村上春樹翻訳ライブラリー)

バビロンに帰る―ザ・スコット・フィッツジェラルド・ブック〈2〉 (村上春樹翻訳ライブラリー)

30歳を過ぎたら - チェコ好きの日記

私やっぱりフィッツジェラルドが好きなんですよね。あと彼の作品で読んでないのは『ラスト・タイクーン』かな。遺作。でもこれ未完なんだよな。

2位 『「待つ」ということ』鷲田清一

「待つ」ということ (角川選書)

「待つ」ということ (角川選書)

この本については、2018年に新たに何か書けたらいいなと思っている。これもまた全体がぼわ〜んとしてる系の本なのだけど、最近の私はそういうのが好きなのかもしれない。

1位 『嘘つきアーニャの真っ赤な真実米原万里

嘘つきアーニャの真っ赤な真実 (角川文庫)

嘘つきアーニャの真っ赤な真実 (角川文庫)

コミュニティに執着しない - チェコ好きの日記

前にも感想を書いているけど、改めて、私がいちばん好きなのは表題作の「嘘つきアーニャの真っ赤な真実」。これはエッセイだからハッピーエンドもバッドエンドもないんだけど、「アーニャ」をどちらかに分類しろと言われたら、やっぱりバッドエンドということになってしまうんだろう。

子供の頃に仲良くしていた大切な友達。大人になってから会っても変わらず大好きで、かけがえのない存在。でも月日は残酷で、久々に再会した旧友との間には、子供の頃には意識することのなかった政治的思想の対立が生まれていた。米原さんはアーニャのことが理解できないし、アーニャは米原さんを理解しようともしない。対立は決定的な溝となって二人の間に表出してしまった。

米原さんの場合は幼少期をチェコスロバキアソビエト学校で過ごしているので、大人になってからできてしまった女友達との溝が「政治的思想の対立」だったわけだけど。角田光代さんの『対岸の彼女』は、同じことをもうちょっと日本人的なテーマで書いていると思う。女同士の一方が結婚や出産を経て、人生の中で大切なものが変わってしまい、お互いのことが理解できなくなってしまうという話だ(ずいぶん前に読んだのでちょっと記憶が曖昧なんだけど、確かそういう話だったと思う)。

対岸の彼女 (文春文庫)

対岸の彼女 (文春文庫)

友達同士に限らず、恋人でも家族でも、長い年月を経て互いの環境や考え方が変わり、かつてのように語り合うことができなくなってしまうことは、全然珍しくない。誰もが、多かれ少なかれ経験することだ。

人は変化し続けなければ面白くなれないし、変化し続けなければ「世界」を見ることはできない。だけど、変化はやはり苦痛を伴うのだ。だからこそ、変化し続けることをやめない人が、魅力的に思えるのかもしれないけど。

世界を見る、とは - チェコ好きの日記


というわけで、気になる本があったらぜひ手にとっていただき、年末あたたかくしてお過ごしください! 私は寒いのが苦手なので外に出ません。

*1:ヤン・シュヴァンクマイエルが卒論の人間なので