毎年恒例のアレ。なお、年間のまとめなので一部、2018年上半期編と重複しております。
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2017年編はこちら。
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10位『水木しげるのラバウル戦記』水木しげる
- 作者: 水木しげる
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 1997/07/01
- メディア: 文庫
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水木しげるが太平洋戦争中に激戦地ラバウルに送り込まれ、そのときの体験を綴ったエッセイ。水木二等兵、よく上等兵に殴られている。でも、殴られたあとでもユーモアを忘れていなくて、「毎日たのしかったナ」とか書いている。過酷な状況ではあったのだろうが、ただ戦地には戦地で「日常」があったのだろう。昨日笑いながら一緒に会話していた友人や先輩は翌日にぽっくり死ぬし、慰安婦のいるテントの前には行列ができる。だけどこのエッセイは、それを悲劇とも喜劇ともとらえず、ただ淡々と描写していた。
9位『エピソードで読む西洋哲学史』堀川哲
- 作者: 堀川哲
- 出版社/メーカー: PHP研究所
- 発売日: 2006/04
- メディア: 新書
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「エピソードで読む」とあるだけに、個々人の哲学者の思想などよりも色恋沙汰とか家族問題とか人間関係とかに主軸が置かれて書かれている。そういう意味では哲学者のゴシップが読める! みたいな本なのだけど、もちろんだからといって哲学の本として二流なわけではない(と思う)。こういう色恋沙汰をやってるからこういう思想になったわけね〜みたいな、哲学の人間らしい部分、骨の部分がよくわかる。個人的に面白かったのはニーチェの恋愛と、ハイデガー&ハンナ・アーレントの不倫。あとサルトルがボーヴォワールに、関係した女性との情事を事細かに書いた手紙を送っていた……とかのエピソードはドン引きしました。面白かった。
8位『旅と芸術:発見・驚異・夢想』巖谷國士
- 作者: 巖谷國士
- 出版社/メーカー: 平凡社
- 発売日: 2015/11/24
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大好きな巌谷先生の本を遅ばせながら。絵画や文学が「旅」をどう描いてきたかを時代を追いながら見ていく本。つまり完全に私が好きな奴である。中世の、まだ世界の全貌がわかってない頃の、「この海をこえると怪物がいる(と思う)」みたいな素朴な感じ、かなり『ONE PIECE』っぽい。中世以前に旅をするって、冗談抜きで『ONE PIECE』みたいな感じだったんだろうし、まあ私も60巻くらいで止まってるんですが、あの漫画はやっぱり「旅行記」として読むとけっこう面白いと思う。
7位『アブサロム、アブサロム!』ウィリアム・フォークナー
アブサロム、アブサロム! (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-9)
- 作者: ウィリアムフォークナー,篠田一士
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2008/07/11
- メディア: 単行本
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フォークナー、今だいぶ時間をかけて『サンクチュアリ』を読んでいるのだけど、『アブサロム、アブサロム!』は難しかったし人物相関図や年表を追いながらじゃないと読めない。だけど、私にとってはけっこう大切なことが書かれている気がするので、来年もぽつぽつフォークナーは読んでいこうと思っている。「大切なこと」とはすなわち、「羨ましい」と思う気持ち、情念、「あいつばっかりずるい」と思う気持ち、そういうものとどうやって折り合いをつけていったらいいのか──あるいは折り合いなんかつけられやしないから、どう内包していけばいいのかってことなんだけど。
6位『翻訳夜話2 サリンジャー戦記』村上春樹・柴田元幸
- 作者: 村上春樹,柴田元幸
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2003/07/19
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『ライ麦畑の反逆児』を試写会で観て、私の中でサリンジャー熱が再熱。こちらの映画は来年1月公開だそうです。ちなみに映画の中で、サリンジャーがフィッツジェラルドのデビュー作『楽園のこちら側』を読んでいるのがちらっと映るんだけど、そういうところも含めて好き。
ニコラス・ホルト主演『ライ麦畑の反逆児 ひとりぼっちのサリンジャー』予告編
ちなみにこの本の個人的な読みどころは、柴田元幸さんが書いた「Call Me Holden」という章。『ライ麦畑』の主人公ホールデン君が、アメリカ文学を批評しているという設定で書かれている。
あれでギャツビーが、「そうか、過去の夢なんかに囚われてちゃいけないんだな」とか何とか悟って、デイジーのことをあきらめちゃったりしたら、興ざめもいいところだよ。
いや、ほんとにね。ギャツビーもホールデン君も、物語の中で成長しない。大人にならない。それを愚かな人間だと笑うやつに、これらの小説の真髄はわからないだろう。
5位『世界最悪の旅─スコット南極探検隊』アプスレイ チェリー・ガラード
- 作者: アプスレイチェリー・ガラード,Apsley Cherry‐Garrard,加納一郎
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2002/12/01
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スコット率いるイギリスの探検隊と、アムンセン率いるノルウェーの探検隊が南極到達を競うのだけど、寒い場所がお得意のノルウェーにイギリスが敵うわけなく、スコット南極探検隊は全滅。凍傷で動けなくなった仲間は見捨てるしかなく、死の淵を彷徨いながら隊員が記した手記が収録されている。心も体も絶望しかなく、「もう死ぬしかない」という状況になったとき、人間はこういうことを考えるんだな……と思った。
しかし、これを読んで「いつか南極に行ってみたいなあ」とも思った。それほどまでに過酷な環境を私は体験したことがないから。まあ「行く」といっても安全なツアーに頼るしかなく、スコット探検隊と同じ体験ができるわけでは全然ないんだけど(というか同じ体験をしたら死ぬ)。
4位『ありがとうもごめんなさいもいらない森の民と暮らして人類学者が考えたこと』奧野克巳
ありがとうもごめんなさいもいらない森の民と暮らして人類学者が考えたこと
- 作者: 奥野克巳
- 出版社/メーカー: 亜紀書房
- 発売日: 2018/05/24
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これは最近感想を書いたので割愛。
3位 『スローターハウス5』カート・ヴォネガット・ジュニア
スローターハウス5 (ハヤカワ文庫SF ウ 4-3) (ハヤカワ文庫 SF 302)
- 作者: カート・ヴォネガット・ジュニア,和田誠,伊藤典夫
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 1978/12/31
- メディア: 文庫
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自身の戦争体験を悲劇としてではなく、SFとして昇華させるヴォネガットの感性が好きだなと思った。そして事実を事実のまま書くより、フィクションとして書くほうがより諦観や悲痛さを表現できることがある……というのは、私が今年小説を書いてみた動機のひとつでもあったのでした。
2位 『ソラリス』スタニスワフ・レム
- 作者: スタニスワフ・レム,岩郷重力,沼野充義
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2015/04/08
- メディア: 文庫
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これも前に感想を書いたので割愛。
1位『ナイン・ストーリーズ』サリンジャー
- 作者: サリンジャー,野崎孝
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1974/12/24
- メディア: 文庫
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厳密にいうと「今年初めて読んだ本」という基準からは外れていて、高校生のときに読んだものを今年ちゃんと読み直したのだけど。『バナナフィッシュにうってつけの日』って、みんな読みましたか。私は、これをこえる短編小説はないのではないかと思うほど、この短編を愛している。高校生のときはこれが戦争で傷付いた人の話だとわからず、「なんか頭おかしくなっちゃった人の話」だと思っていたんだけど、年をとるといろんなことがわかるようになって良い。
今年のブログ更新は来週でおしまいです。イタリアに行ってたとき、更新が日本の22時ではなく向こうの22時になっちゃったというミスをしましたが、「木曜日、22時の更新」1年間続けられたな。よかったよかった。