チェコ好きの日記

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読書

なぜ私はあの人が好きなのかしら

先日、山本英夫さんの『ホムンクルス』というマンガを全巻ほぼ一気読みした。それで、そのまま同じく山本さんの『のぞき屋』『新のぞき屋』も全巻ほぼ一気読みした。ちなみに、『のぞき屋』『新のぞき屋』はKindleUnlimitedで読めるよ。マンガ読むのってお金…

浮いた氷山の水面下には何がある?:『発酵文化人類学』を読む

知人に、発酵デザイナーの小倉ヒラクさんという方がいる。最初にお目にかかったのは確か「灯台もと暮らし」さんのイベントだったと思うのだけど、イベント後にブログを読んだらレヴィ=ストロースのことがいっぱい書いてあって(しかもそれがすごく面白い)…

『鬱屈精神科医、占いにすがる』を読む

生きることが苦しいと感じたとき、人は何に救いを求めるだろうか。ある人は宗教かもしれないし、ある人は哲学や文学かもしれない。ある人は心療内科に行くかもしれないし、またある人は占い師にすがるかもしれない……。『鬱屈精神科医、占いにすがる』という…

「できる」と「できない」の間の話

Twitterで教えてくれた人がいたので、高橋秀実さんのエッセイ『はい、泳げません』を読んでみた。著者の秀実さんはカナヅチで、水が怖くてまったく泳げないのだけど、そんな秀実さんが中年になって一念発起し、スイミングスクールに通い出すというエッセイで…

タラレバ娘、抗えない老い、後悔、そして『騎士団長殺し』

村上春樹の最新長編小説『騎士団長殺し』の感想を書く。物語の核心に触れないよう細心の注意を払うけど(つまり、まだ読んでない人が目にしても大丈夫なように書くけど)、とはいえ「何も知らない状態で『騎士団長殺し』を読みたいんだッ!」という人にはこ…

都市の孤独と、地方『移住女子』のモテ

灯台もと暮らし編集長、伊佐知美さんから著書『移住女子』をご恵贈いただき、週末に読んでいました。以下は、そんな『移住女子』の感想です。移住女子作者: 伊佐知美出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2017/01/27メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含…

感想文:雨宮まみ『東京を生きる』

人の訃報に触れてその人の本を手にとってみるという行為は、咎められはしないもののあまり品の良い行ないだとは思えない。だけど、そういえばどんなことを書いていた人だったんだっけ、とAmazonで検索していたらどうにも止まらなくなってしまい、気が付いた…

私が今年いちばん感動した本について。:国分拓『ヤノマミ』

シンガポールを発った飛行機がバリ島のングラライ空港に向かっているとき、私は席で目元にウェットティッシュを当て、赤く腫れた目をごまかすのに必死であった。そしてその不自然な様子を、隣の席(正確には隣の隣の席。真ん中の席が空席だった)に座ってい…

感想文:中島らも『水に似た感情』とバリ島

バリ島を舞台にした小説やエッセイをいくつか読んでいます。昔読んだ吉本ばななの『マリカのソファー/バリ夢日記 (幻冬舎文庫―世界の旅)』はもう一度目を通してもやっぱりけっこういい小説だなと思ったし、あとは椎名誠のエッセイ『あやしい探検隊 バリ島横…

自己啓発と婚活と腰痛病院

世の中には、他人のレビューや口コミがアテになるものと、アテにならないものがある。もちろん例外はいくらでもあるのだけど、たとえば、Amazonの本のレビューとか、飲食店のレビューとか、美容院の口コミとか、それらは〈比較的〉アテになる、と私は思って…

もう一度読む、村上春樹『1973年のピンボール』感想文

村上春樹の『1973年のピンボール』を読んだのは高校生のときだったので、もう10年以上も前です。当時読んだ感想を覚えている限りで率直にいえば、この小説は正直何も面白くなかった。ただ私の読解力がなかったといえばそれまでですが、だってめちゃくちゃ読…

なぜ松浦弥太郎さんは『オン・ザ・ロード』が好きなんだろう?

「なぜ松浦弥太郎さんは『オン・ザ・ロード』が好きなんだろう?」というタイトルを付けてしまったのですが、結論からいうと、個人の好みがすべてその人の作っているものや仕事に反映されているとは限らないし、この問いについて考えることに意味があるとは…

〈エジプト的〉から〈ギリシャ的〉へ/村田沙耶香『コンビニ人間』がおもしろかった

村田沙耶香さんの芥川賞受賞作、『コンビニ人間』を読みました。芥川賞って私は全然興味がなくて毎年スルーしているのですが、『コンビニ人間』はいつもとちがってちょっと面白そうだったのと、読む機会に恵まれたのでありがたく拝読。そして実際に読んでみ…

2016年上半期に読んで面白かった本ベスト10

私は毎年年末になると「今年読んで面白かった本のまとめ」みたいなエントリを書いているのですが、今年は読んでいる本が昨年の倍くらいあるので、上半期で一度ベスト10をまとめておこうと思いました。ちなみにこれはあくまで「私が2016年上半期に読んだ本」…

〈無計画〉のすばらしさと難しさ/『家族無計画』感想文

紫原明子さんが最近上梓された、『家族無計画』という本を読みました。家族無計画作者: 紫原明子出版社/メーカー: 朝日出版社発売日: 2016/06/10メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログを見るどんな内容かというと、実業家の家入一真さんと離…

人事を尽くして天命を待つ/『仕事ができて、小金もある。でも、恋愛だけは土俵にすら上がれてないんだ、私は。』

ファーレンハイトさん改め桐谷ヨウさんがこの度上梓された、『仕事ができて、小金もある。でも、恋愛だけは土俵にすら上がれてないんだ、私は。』というタイトルが長いため『でも恋』と略されている本を遅ばせながら読んでみました。仕事ができて、小金もあ…

社会を信じるか、大衆を信じるか?/『隠居系男子的。』の感想

くいしんさん(@Quishin )が編集されている、灯台もと暮らし運営会社Wasei代表の鳥井弘文さんへのインタビュー本、『隠居系男子的。』を読みました。あまり自分のことを語らない鳥井さんが、人目に触れるかたちでは初めて、自分のルーツや生い立ちや学生時…

美しい歌声をもつ者は、やがて惨たらしい死を遂げる/ポール・ボウルズ『優雅な獲物』

ニューヨーク出身、のちにモロッコのタンジェへ移住した作家、ポール・ボウルズに激ハマリしています。異郷・北アフリカの猟奇と野蛮を好んで描くグロテスクな作家、といった偏見が強いボウルズですが、彼が描く異郷の物語は、どこか普遍性を持っているよう…

ユダヤ人の定義不可能性/四方田犬彦『見ることの塩』ほか

もしバスに乗るならば、なるべく後部座席に坐ること。ガラスの近くには身を置かないこと。爆弾犯人は大概、バスに乗車しようとした時点で誰何され、次の瞬間に起爆装置のボタンを押すから、前方の乗車口付近に坐っていると、死亡したり怪我をする確率が高い…

お正月読書:夏目漱石『行人』/いいたいこともいえないこんな世の中じゃ

あけましておめでとうございます。今年も当ブログをよろしくお願いいたします。昨年の下半期から、夏目漱石の小説をちょくちょく読んでいました。私は実は、本を1冊だけ読んで、その1冊だけで感想文を書くというのがどうも苦手です。同じ著者の本を何冊か読…

流謫と残留 あなたはどっち派?

私のハンドルネームは「チェコ好き」というんですが、今更ですがこのハンドルネームの由来を説明すると、大学と大学院時代にチェコ映画を研究していたことが元になっています。具体的にいうと、卒業論文はヤン・シュヴァンクマイエルという監督について、修…

2015年、読んでよかった本ベスト5 #読み終わった本リスト Advent Calendar 2015

www.adventar.org今年読んだ本を数えてみたら、現時点で101冊でした。今月末に読み終わる本が何冊かあるので、最終的には103〜105冊くらいになるんだと思います。ちなみにこれ、昨年の同時期にまったく同じこといっていたので、読み直したらちょっと笑えまし…

ノームコアとマツコ・デラックス

「衣服にこだわるなんて、もはやそれ自体がカッコ悪いことで、鍛え上げられた健康な肉体さえあれば、なんでもないTシャツを1枚、さらっと着ているのが最もカッコいい」。 さて、こちらは私の意見ではなく浅子佳英・宇野常寛・門脇耕三の共著『これからの「カ…

魔物をつれて帰る

勇気を一度も知らなくて、わたしは悲しい。 恐怖が去ろうとしないので、わたしは悲しい。 太陽に近く、熱からは遠く、 わたしの終末はもうそこまで来ていると思う。 ピクニックは賑やかすぎて、足を踏みだせない。 テーブルは強すぎて、わたしは縁に蹙みつい…

欲望にひた走った中村うさぎが逆に禁欲的であるという聖書のはなし/あるいは『フラニーとズーイ』。

怪しげなカルト宗教にハマってしまったわけではなくただの趣味ですが、最近聖書に関する本をたくさん読むようにしています。今回読んで面白かったのは、クリスチャンでカルヴァン派の作家・佐藤優さんと、同じくクリスチャンでバプテスト派のエッセイスト・…

渋谷直角『奥田民生になりたいボーイ 出会う男すべて狂わせるガール』のわりと本気な感想

実は8月上旬に読み終わっていたのですが、旅行等々でバタバタしていたらすっかり感想を書くのを忘れていました。というわけで本日は『奥田民生になりたいボーイ 出会う男すべて狂わせるガール』の感想文を書きますが、きっとネタバレするので未読の方はご注…

過去の呪縛から逃れられない男 『おやすみプンプン』感想文

サブカル界隈で槍玉にあげられることの多い浅野いにおという漫画家がいますが、私も昔、よく読んでいました。映画化した『ソラニン』のほか、『素晴らしい世界』とか『虹ヶ原ホログラフ』とかも持ってましたね。素晴らしい世界(1) (サンデーGXコミックス)…

『クラブカルチャー!』/「意味」から「強度」へ、音韻から音圧へ

私は昔から音楽の話をするのが苦手で、理由の1つはたぶん、歴史がわからないからです。文学史は高校の世界史とか日本史でやるし、映画史は本を数冊読めば事足りるし、美術史もどっかから出てる「西洋美術史」と「日本美術史」ってタイトルがついている2冊を…

日本の「インターネット的」はテレクラから?

先日Kindl版が出た出た宮台真司の『世紀末の作法 終ワリナキ日常ヲ生キル知恵』を読み終わりました。本書は宮台真司が主に90年代に雑誌などに書いた文章をまとめたもので、全体から90年代のかおりがムンムンするのですが、2015年の今になって読むとまるで「…

アイディアは移動距離に比例しない/ユクスキュルのダニ

今回は、いつも以上にわけのわからない話をしようと思うので、お忙しい方は回れ右をおすすめします。しかも私自身あまり理解していないので、なんか解釈を誤っている可能性があります。 ユクスキュルのダニ ユクスキュル[1864-1944]という人はエストニア生ま…

ショッピングモールは嫌われ者?

批評系の人たちの間では、ショッピングモールという存在はひどく嫌われています。かくいう私もこの施設に対して、今まではあまり良い印象を持っていませんでした。便利だし、実際はなんだかんだいって利用しているんですけどね。ショッピングモールが一部の…

「ポスト・インターネット」の時代と情報の濃度

「ポスト・インターネット」とは、「インターネットとリアルがもはや区別されない、シームレスとなった環境」*1のことだそうです。6月号の美術手帖の特集が「ポスト・インターネット」だったので、今回はこれの感想を書きます。美術手帖 2015年 06月号作者: …

ほかのものは消えていい。なぜなら醜いから。

なんかどうかしてる小説っていうのは、とにかく冒頭とラストの破壊力がとんでもないものだと私は思っています。 大切なことは二つだけ。どんな流儀であれ、きれいな女の子相手の恋愛、そしてニューオ ーリンズの音楽、つまりデュ ーク・エリントンの音楽。 …

私たちはどうしたら“イケてる人”になれるのか?

イケてる人とダサい人、どちらでありたいかと問われたら、よほどひねた回答をするのでなければ、ほとんどの人は前者でありたい、と答えると思うんですよね。しかし問題はここからで、では“イケてる人”とはどのような人なのか、という話になります。何におい…

フィッツジェラルド『ベイビー・パーティー』についてのノート

スコット・フィッツジェラルドの著作を着々と開拓している私。とりあえず日本語で読めるものを完全制覇しようと思い、地味にいろいろ買い集めています。いつか完全制覇をするその日の前に、印象に残った短編小説の感想をメモしておきます。『冬の夢』に収録…

消費じゃない「上質な暮らし」と、解釈じゃない批評

先日読んだこちらの記事が話題になっているようだったので、少しばかり私見をメモしておこうかと思います。【第61回】ネタ化される「上質な暮らし」と盲信する「サードウェーブ系男子」 | すべてのニュースは賞味期限切れである | おぐらりゅうじ/速水健朗 |…

ハッピーエンドか、地獄の始まりか『ザ・ゲーム』感想文

どうしてお前がそれを読むんだ、という前提については省きますが、『ザ・ゲーム 退屈な人生を変える究極のナンパバイブル』という本を読みました。アメリカのPUA(ピックアップアーティスト、ナンパを常習的に行なっている人たちのこと)たちのコミュニティ…

岡崎京子の描いた”ガールズ”はどこへ消えたのか?

どこで読んだだれの文章なのか忘れましたが、「岡崎京子の漫画に出てくる女の子っていうのは、男と恋愛するのが好きなんじゃなくて、男と恋愛した話を女同士でするのが好きなんだよね」ということをいっていた人がいて、なんて的確な岡崎京子評なんだ! と思…

『オトコのカラダはキモチいい』は腐女子のための本ではなくて

発売するやいなや早々に重版が決定したとのことで話題になっている、『オトコのカラダはキモチいい』という本を読みました。AV監督の二村ヒトシさん・文筆家の岡田育さん・腐女子文化の研究者である金田淳子さんの3名による共著です。オトコのカラダはキモチ…

本気で好きだと、ちょっと気持ち悪い。

当ブログをある程度継続的に読んでくださっている方は、私が昨年の夏頃から、スコット・フィッツジェラルドの『グレート・ギャツビー』の話をしつこく繰り返していることをご存知かと思います。 退屈は人を殺す『グレート・ギャツビー』と『ザ・スコット・フ…

『笑ゥせぇるすまん』で喪黒福造にドーン!ってやられた人はビフォーとアフターどっちが幸せなのかな

少々思うところがあって、2月に入ってから『笑ゥせぇるすまん』をまとめて読んでいたのですが、実はわたくし、幼稚園時代に夢のなかで喪黒福造に追いかけ回されたことがあり、以来こちらの漫画は若干トラウマになっています。あの夢怖かったなあ。笑ゥせぇる…

アートよ、私を受けいれて 『アート・ヒステリー』その他

「自分を好きになろう」「自分を肯定しよう」という話は、いろいろな界隈で頻繁に見かけます。私自身としてはこのことに特に異論があるわけではなく、「まあ結局そこよね」と納得はするのですが、それにしたってよく見かけるので、「またその話か」と耳タコ…

読書会を終えて『なぜあなたは「愛してくれない人」を好きになるのか』

2月15日に、二村ヒトシさん著『すべてはモテるためである』を課題図書にした、Skype読書会に参加しました。 第5回Skype読書会「女子目線で語る『すべてはモテるためである』(二村ヒトシ)」開催のお知らせ - 太陽がまぶしかったからというわけで、今回はその…

狂わせ、狂う能力はあるか 橋下治『恋愛論』感想文

1年以上前に、二村ヒトシさん著『すべてはモテるためである』を読んだのですが、その二村さんが影響を受けた本であるという話を聞き、橋下治の『恋愛論』を手に取ってみました。『すべモテ』のほうの感想文はこちら。 二村ヒトシ『すべてはモテるためである…

『文化系女子という生き方』は、21世紀の人間の生き方かもね

「語りえぬものについては沈黙しなければならない」とはよくいったものですが、人にとって最大の「語りえぬもの」とは何でしょう。私が思うに、それは「自分」です。生まれてから24時間、365日一緒にいるにも関わらず、永遠の謎であり、永遠のブラックボック…

女性は2人でつるむのが吉 『るきさん』『ハルチン』ほか

以前私はこのブログで、「15歳前後の少女は、2人でいると閉鎖的で狂信的な世界を築き上げてしまうことがあるので、要注意」という主旨のエントリを書きました。スレンダーマン事件と『小さな悪の華』に見る、“少女2人”の狂信性 - (チェコ好き)の日記ですが今…

綱島温泉と『つげ義春の温泉』ほか

先日、ちょっと時間が空いていたので*1、綱島温泉で開催されていたイベントに行ってきました。綱島に温泉があるなんて知らなかったです。リンク先などを読むと、どうやらサブカル好きにはたまらないディープスポットらしい。何より、下記の記事で会田誠がい…

刺激と不幸を求めてしまうのはなぜ? 國分功一郎『暇と退屈の倫理学』

「なんとなく退屈だ」。これは最近の私の感想でも地方の若者の感想でも東京のOLや女子大生の感想でもなく、ドイツの哲学者マルティン・ハイデガーが「退屈の第三形式」として提示した、最も深い「退屈」の形態です。しかしそう難しく考えなくても、「なんと…

ホリー・ゴライトリーのように善きことをしたい2015年、『ティファニーで朝食を』。

あけましておめでとうございます。2015年も張り切って更新していこうと思ってますので、今年も当ブログをみなさんよろしくお願いいたします。さて、私が毎年1月1日に行なう作業といえば、愛用しているほぼ日手帳の入れ替え・予定及び目標の更新です。が、ず…

2014年に読んで良かった本ベスト7を発表します。

2014年、まだ半月くらい残っているので自分のなかでは早いかなって気もするのですが、とりあえず今年も残りわずかなことに変わりはないので、2014年に読んだ本のまとめをやろうかと思います。私は読んだ本の記録を「読書メーター - あなたの読書量をグラフで…